土曜日の早朝。
まだ街はまどろみの中。
サラリーマンは寝静まる静寂の時間に、ひとりの男が、重い扉を開けた。
10年前──姐御のために買ったLOUIS GARNEAU LGS-MV 1。
久々にその小さな相棒を引っ張り出し、相談役はトレーニングと決戦の旅へ出発した。
🚲 姐御の愛車で挑む、朝の戦
フレームサイズは370。
男が乗るにはやや小さめやが、
気合と根性でサイズなんか超えてやる。
タイヤに空気を入れ直し、そっとサドルにまたがる。
目指すは、灘の裏街道、石田鶏卵前のレトロ自販機。
ただし、その道中には、あの悪名高き──
**地獄の「深江ベタ踏み坂」**が待ち受けていた。

🏙️ 芦屋を抜け、坂のふもとへ──静かなる決意
芦屋のシーサイドタウンを横目に、
ゆるやかな海風とともに、足を回す。
最初は優雅なクルージング。だが、その先に奴は現れる。
深江のベタ踏み坂──
鉄骨の背を持つモンスターが、遠くから睨んでくる。
近づくほどに、ペダルが重くなる。
そして、勝負の時は来た。

🧗♂️ 一気登り。前だけ見るな、心が折れる。
一旦、坂の前で息を整え──勝負を仕掛ける。
「2速には、あえて入れん。3速で勝負や。」
それが、男の意地。
前を見たら負ける。絶望するから。
うつむき加減でひたすら進む。汗は目に入るが、止まらへん。
姐御のミニベロで、なんとか登頂成功。
この1台、まだ戦(いくさ)で使えるで。


🍜 到着──石田鶏卵の名物、レトロうどんそば自販機
坂を下ったら、少し折り返して左折すると、目の前に現れるは石田鶏卵の店先。
その一角に、ひっそりと構えるのがうどん・そば自販機や。


価格は300円。昭和の名残が、今も息づいとる。
300円を投入、迷わずそばをチョイス。
カウントダウンが始まる。
**「チーン!」**という電子レンジ風の音とともに、戦利品が投下される。
無造作に刺さった割り箸。
乗っかる天ぷら、その下にはネギとちくわ。
簡易テーブルに腰掛け、箸を持つ手が震えた。
──戦の余韻、まだ冷めてへん。




🥢 一口すすれば、五臓六腑にしみわたる
まず、出汁をひとすすり。



「……沁みる。五臓六腑に、沁みるで。」
疲れた体に、黄金色の汁が流れ込む。
麺をすするたび、坂の痛みが消えていく。
まるで戦場帰りの兵士にふるまわれる、勝利の一杯や。
最後は、出汁まで飲み干して完食。
腹がたぷんたぷんや。もうあの坂には戻れん。
帰路は、別ルートでのんびりと。
それもまた、旅の余韻や。






📝 まとめ:レトロ自販機のそばは「普通」やけど、特別なんや
項目 | 内容 |
---|---|
場所 | 石田鶏卵(〒658-0023 兵庫県神戸市東灘区深江浜町110−2) |
名物 | 昭和レトロな うどん・そば自販機。 店舗が開店時は卵をおとして月見も可 |
価格 | 各300円(税込) |
特徴 | 天ぷら・ちくわ・ネギ入りの自販機そば |
🚴 ライドのついでに「昭和体験」、してみへんか?
普通のそばや。
出汁も、麺も、特別うまいってワケやない。
でもな──味じゃないんや、物語なんや。
坂を越えた先にある、1杯のそば。
それは、日常に潜む、ちっちゃな非日常。
時間のある朝に、ちょっと早起きして、
ミニベロで昭和にタイムスリップしてみませんか?


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