朝からヤル気満々の専務と相談役。
向かったのは、JR西宮駅近くのドラッグストア「ウエルシア」。
ここで手際よく、缶ビール、缶チューハイ数種、ポテチ、貝ひも、ポリピーを仕入れる。保冷バッグは必須や。最近、ダイソーのお洒落ブランド「Standard」で買うたで。

「電車旅ゆうても、武器(酒)と防具(つまみ)がなけりゃ、ただの修行や」
今日の切符代はたった240円(JR西宮→塚本)。
しかし、使う路線は4府県・約6時間。
乗り間違えたら不正乗車で豚箱直行。素人がやったら命取りや。


■第1区間:JR西宮(9:42発)→京橋[東西線経由](10:12着)
改札で切符を通すその瞬間から、大回り乗車は始まっている。
一歩間違えば不正乗車、キセルの世界。
だが、俺らには鉄の意志と合法の知識がある。


尼崎からJR東西線へ。ここでまず1本、缶ビールを開封したいとこやったが、人がまだまだ多いので断念や。
「慌てんでええ。時間はたっぷりある。問題あらへん」
京橋に着く頃には、二人揃って、心の中では早よ開けとうて、うずうずしとった。
■第2区間:京橋(10:19発)→天王寺[環状線](10:33着)
大阪環状線は、万博に向かう人と外国人観光客でにぎわっとる。
そこにスーツじゃない、Tシャツ姿の専務と相談役。

「この区間は、つまみタイムや」
ここで取り出したのが、じゃがりこと柿の種。
缶のプルタブが開く音が、どこか神妙やった。
■第3区間:天王寺(10:45発)→加茂[大和路線](11:34着)
ここからは大和路線。都会の景色が消え、田舎の線路と畑の風景に。

座席に体を預け、チューハイ片手にウトウトする相談役。
「こっからが本番や、気ぃ抜くな」
専務は寝落ち寸前の相談役の気合いを入れ直す。
仲間とは、こういうもんや。



■第4区間:加茂(11:40発)→柘植[非電化ディーゼル地帯](12:38着)
ここで登場するのが、渋いディーゼル車両。
「おう、汽車や汽車。電気に頼らん、昔気質の奴や」
ちなみに柘植は「つげ」と読むで。「たくしょく」ちゃうで。




田舎道をガタゴトと進む音に酔いながら、プシュっと行きたいところやが、大和路線で飲みすぎてストックが少ないんで、ここは飲まんとセーブや。
⚠️注意
柘植駅で降りる時は、運転手に切符を見せて「大回り乗車です」言うて降りるんや。切符渡してしもたら終わりやで。
■第5区間:柘植(13:01発)→草津[草津線](13:47着)
乗り換え時間が20分ほどあったんで、ちょっとトイレタイムや。
しかし、駅には何もない。しゃあないんで、車内で待つことに。
車内は静かで、ほとんど乗客はおらん。出発前からチューハイをプシューや。


専務オススメのSUNTORY「THE PEEL」。甘くなく、レモンの果皮の苦味がエエ感じや。
こりゃ早速、箱買いで事務所の冷蔵庫に置いとかなあかんな。
ストックも残り少なく心配やったが、専務は落ちついとった。
「草津で補給するから心配せんでエエ。草津から最後の仕上げや!」
■第6区間:草津(13:52発)→塚本[東海道本線](14:48着)
草津駅でセブンイレブンに駆け込み、缶ビール、ミックスナッツを仕入れる。
ここから乗るんは、JR西日本が誇る「特急潰し」の異名を持つ新快速。
草津から大阪までなんか、時速130kmであっちゅう間や。

このラストスパートこそ、真の試練。
酔いが回ってきたタイミングで、仕上げのビールや。


専務が一言、「6時間の逃走劇、最後まで逃げ切るで!」
■塚本駅:大回り成立の聖地
ここで最後の試練や。酔いが回ってうとうと寝てもうて、大阪駅で降りるの忘れたら即アウト。不正乗車で豚箱行きや。尼崎に行ってしもた時点で経路が繋がってまう。

大阪駅で普通に乗り換え。そしてついに、塚本駅で下車。
JR西宮から240円、
通過駅は西宮駅▶︎尼崎▶︎京橋▶︎天王寺▶︎加茂▶︎柘植▶︎草津▶︎大阪▶︎塚本──
兵庫→奈良→三重→滋賀→大阪へと巡る大回りが合法で成立。

相談役:「やり切ったな」
専務:「おう、合法鉄旅や」
■そして帰還、聖地「ますや商店」へ
一旦塚本駅で降りて、再度入場。普通に乗り込み、JR西宮に15:40分着。

酒気帯びのまま迷わず向かうは角打ちの聖地──
「ますや商店」。
JR西宮駅から徒歩20分。16時00分ぴったりに到着したが、すでに3人の猛者が店内に。しかも一人はもうカレー食っとった。やりよるな。

金曜限定の特製カレー(メニューに載ってへん。たぶん540円)を頼み、
赤星ビールで締める。

「鉄旅のカレーは、胃袋に染みる」
「カレーは飲み物、鉄道は人生」
■まとめ:大回りは知識と覚悟の賭場
大回り乗車は、合法やが一歩間違えば地獄行き。
素人が手を出せば、改札で止められて終わりや。
だが、俺らは知っている。
「ルールを知る者だけが、ルールを破らずに遊べる」
──これが、専務と相談役の鉄道スタイルや。
もしこの旅に憧れたなら、まずは「ますや商店」でサクッと一杯や。
そこが、お前の旅の始発駅や。
付録:大回り乗車とは
JR西日本の「大回り乗車」は、大都市近郊区間内でのみ利用できる、JRの特例やで。大回り乗車を利用することで、実際の乗車経路に関わらず、最短経路の運賃で乗車することができるんや。
大回り乗車のルール
- 大都市近郊区間内であること:大回り乗車は、大都市近郊区間内で利用できる。大阪近郊区間は、例えば、大阪駅や京都駅、神戸駅などを含む広範囲なエリアや。
- 普通乗車券または回数乗車券で利用すること:新幹線や特急など、普通乗車券以外の乗車券は利用できまへんで。
- 途中下車できない:乗車した駅と降りる駅の間で、改札の外へ一度たりとも出ることはできまへん。
- 一筆書きの経路:同じ駅を二度通ることはできまへん。通ったら終わりや。


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