夜勤明けの身体に朝日が突き刺さる。普通なら家路につくところだが、この男――兵庫県サイクル&ドリンク愛好会の専務は違った。無意識のうちに足は新今宮へ向かい、通天閣が下町を睨む界隈へ吸い寄せられていく。眠気より先に喉が鳴る。今朝もまた、盃の修羅場が始まろうとしていた。
第一章 夜勤明け、向かうは新今宮
朝の光に目を細めながらも、専務の進路は一切ぶれない。自宅方面を完全に無視し、一直線に新今宮駅へ。見上げれば通天閣がいつも通りの威圧感で鎮座している。
「今日も元気そうやな…」
そう呟きながら、戦場へ向かう親分の背中そのままに、路地へと消えていった。


第二章 ホルモン・マルフクで開戦
まずは外せんのが「ホルモン マルフク」。ホルモンとアブラを注文し、仕上げはニンニクを山盛り。これをビールで一気に流し込む。
夜勤の疲労が胃袋で溶けていく瞬間――これぞ至福。
西成も昔ほど荒くはなく、インバウンドと再開発で街は様変わりしつつある。とはいえ油断は禁物。派手に動かず、静かに飲む。それがこの街の仁義というものだ。


第三章 縁起担ぎの八福神
身体が温まったところで二軒目、「飲み処 八福神」へ。七福神を超える八柱とは、なかなか欲張りな名乗りだ。
店内の壁は西成系YouTuberのステッカーだらけ。どうやら相当愛されとる店らしい。



第四章 大人のバナナジュースは油断禁物
名物は“大人のバナナジュースセット”。ウイスキーを割ったバナナジュースに、揚げた玉子サンドが付く異色の組み合わせ。
甘くて危険な味わいが疲れた身体にスルスル入るが、後から確実に効いてくる。
「これは…地味に殺しに来とるな」
そう言いながらも、グラスは止まらない。さすが専務、胆力が違う。


第五章 新今宮の朝と撤退判断
周囲を見渡せば、炊き出しや無料提供の店もちらほら。払える客から多めに取る仕組みも、この街なりの流儀だ。
かすうどん1200円――確かに高いが、その一杯が誰かを救うなら悪くない。
そろそろ瞼が重くなってきたところで、今日はここまで。
「戦は退き際が肝心や」
そう呟き、専務は静かに駅へと向かった。

おわりに
夜勤明けの新今宮で、ホルモンに始まりバナナ酒で終わる朝の修羅場。豪快に飲みながらも、引き際はきっちり見極める――それが専務の流儀や。眠気に勝てなくなったら素直に退く。次の戦場はまた別の日。今日もまた、盃の伝説が一本積み上がった朝であった。


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