夏の狂気は去ったはずなのに、まだ空気が熱を引きずってる。
汗が滲むほどじゃないが、走り出せば背中に太陽の記憶がまとわりつく。
そんな午前。専務と相談役、ひとつの決意を胸にペダルを踏む。
「うどんが食いたい」──ただそれだけや。
だがどうせ食うなら、ちょっとクセのあるやつがいい。
選んだのは神戸・長田の「ぼっかけうどん」。
牛すじとこんにゃくを甘辛く煮込んだ、あの下町の味。
待ち合わせは摩耶埠頭。
海風の匂いを嗅ぎながら、2台のミニベロが火を噴く。

兵庫運河で一息、ノンアルで乾杯
三宮を抜け、兵庫運河へ。
水面に映る陽光がきらきらして、まるで街が笑ってるみたいや。
ひとまず、イオンモール神戸南で休憩。
冷えたノンアルビールを仕入れて乾杯する。
もちろん、まだアルコールは御法度。
今日の選手権は「アサヒゼロ vs 麒麟ラガーゼロ」。
結果は──麒麟の勝ち。
あいつの喉ごしには、男の余韻がある。


裏道を抜けて「立ち喰いうどん ミサワ」へ
軽く汗を拭いて、再出発。
長田の裏通りは、どこか懐かしい油と鉄の匂いが漂う。
工場の壁に描かれた時間の跡が、妙に美しい。
「立ち喰いうどん ミサワ」。
その名は無骨だが、佇まいは職人の矜持を感じる。
平日は工場マンでごった返すが、今日はまだ静かや。
それでも客が次々と入ってくる。名店の証拠やな。


ぼっかけの誘惑
カウンターで注文と支払いを済ませ、立ち食いテーブルに陣取る。
注文はもちろん「ぼっかけうどん」。
天ぷらも気になったが、今日は純粋に“ぼっかけ”と向き合う日や。
出てきた丼を見た瞬間、もう勝負はついとった。
出汁の香りが鼻をくすぐり、うどんのコシが箸に伝わる。
そこに甘辛のぼっかけが絡みつく。
旨味と渋味の二重奏や。
気づけば無言で食い切っていた。
ご馳走様──心の中で呟き、軽く頭を下げた。
店員の兄ちゃんも愛想よく、「また来てや」と笑ってくれた。
ええ店や。

うどんの後は、海へ向かう
ぼっかけパワーを満タンに、長田を後にする。
目指すは明石海峡大橋。距離にして約10km。
海沿いを走る道は、潮風が気持ちええ。
専務「人間、何かを追うときは黙るもんや」
専務がポツリと言った。
確かに、無駄な言葉はいらん。
ペダルを踏む音と波のリズムだけが、今日のBGMや。
一旦、舞子駅に寄る。
駅直結のスーパーマルナカでドリンクとおつまみを購入し、
明石海峡大橋の真下に移動して、特等席で乾杯。
この一杯のために、走ってるようなもんや。






この一日をまだ終わらせない
橋の下での乾杯を終えたが、まだ喉が渇いてる。
輪行前に、JR舞子駅前で二次会。
それでも足りずに、最後はホームのベンチで海風を肴にもう一杯。




エピローグ
走って、食って、飲んで。
ただそれだけの一日が、心を満たす。
ぼっかけの甘辛は、人生の味に少し似てる。
渋くて、しぶとくて、また食いたくなる。
次はどこの麺に会いに行くか──
専務と相談役の旅は、まだ続く。
▼【店舗情報】
立喰いうどん ミサワ
〒652-0863 兵庫県神戸市兵庫区和田宮通5丁目1−11










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