今日はミニベロを休ませる日。だが、兵庫県サイクル&ドリンク愛好会まで休業するわけではない。会長と若頭は神戸電鉄・新開地駅に集合し、向かった先は昭和の面影が色濃く残る湊川界隈。商店街を歩き、地元の店で酒とアテを仕入れ、昼間から堂々と明石亭を開店する。さらに東山商店街では串カツを攻め、最後は立ち食いうどんで締める。自転車がなくても、胃袋に筋を通す仕事はいくらでもある。今回は「風切り家業」ならぬ「昭和レトロ巡回」の一日である。
新開地駅に集結。今日は自転車を置いて昭和の縄張りへ

午前、神戸電鉄・新開地駅に会長と若頭が静かに集結する。いつもなら輪行袋を抱え、ミニベロを展開して「今日はどこまで流すか」と相談するところだが、今日は自転車の姿はない。
「今日は歩きやな。」
会長「今日は歩きやな。」
会長の一言で本日の巡回は始まった。
新開地といえば、かつて神戸を代表する歓楽街として栄えた歴史を持つ街。現在も新開地本通りをはじめ、昔ながらの商店や飲食店、映画館などが残り、歩いているだけで昭和の空気を感じられる。神戸高速線の新開地駅を起点に、湊川方面へ歩けば、近代的な神戸の街並みとは少し違った時間が流れていることに気付く。
今回の目的は観光名所を慌ただしく巡ることではない。商店街を歩き、気になった店へ入り、地元の味を仕入れて、昼から一杯やる。それだけだ。
しかし、我々にとってはそれが立派な「祭り事」。
まずは湊川方面へ向かい、最初の仕入れ先として目を付けたのがスーパーマーケット「湊川グルメ」。
「まずは飲み物を押さえとくで。」
若頭が店内へ消える。
今日の作戦に必要なのは、観光パンフレットではない。ドリンクである。
湊川グルメからマルシン市場へ。胃袋への仕入れが始まる






ドリンクの仕入れを終えた二人は、続いてマルシン市場へ向かう。ここからが本日の本格的な「仕入れ」である。
市場の魅力は、やはり個性的な専門店が残っていること。チェーン店ではなかなか出会えない、昔ながらの商売人の空気がそこにはある。
まず向かったのは、知る人ぞ知る名店「原とうふ店」。
汲み上げ豆富や匠の絹厚揚げなど、酒のアテとして申し分ない品を確保する。



「豆富があるだけで、もう一杯いけるな。」
会長も満足そうだ。
さらに惣菜店の「かね竹」では、手羽唐などを仕入れる。揚げ物の香りが漂えば、自然と酒の方へ意識が向いてしまうのが、この愛好会の悪いところでもあり、良いところでもある。
必要な物資をすべて確保したところで、二人は適当な場所を陣取り、明石亭「マルシン市場店」を開店。


豆富、厚揚げ、手羽唐。
そして冷えたドリンク。
自転車はない。
ヘルメットもない。
しかし、いつもの巡航後と何ら変わらない光景がそこにある。
「今日は足で巡航しとるだけや。」
そう言いながらグラスならぬ缶を傾ける。
市場で仕入れたアテをその場で味わうと、これがまた格別。観光客向けの店ではなく、地元の人々が普段使いする商店街だからこその味わいがある。
ほどよく酔いが回ってきたところで、次の縄張りへ向かうことにした。
東山商店街へ進軍。稲田串カツ店で一本130円のシノギ




マルシン市場をあとにし、東山商店街方面へ向かう。湊川から続く商店街を歩いていると、昭和の商店街らしい看板や店舗が次々と目に入る。
そんな中、会長と若頭が狙いを定めたのが「稲田串カツ店」。
東山商店街を代表する人気店の一つで、何よりありがたいのがアルコールドリンクの持ち込みができること。



「持ち込みOK……?」
会長の目が輝く。
「懐が深い店やな。」
一本130円という価格設定も嬉しい。串カツを何本か頼んでも財布へのダメージは少なく、持参したドリンクを片手に楽しめる。昨今、何かと値上がりが続く世の中で、この気軽さは実にありがたい。
二人は好みの串を選び、揚げたてをいただく。
衣はサクッと香ばしく、中から熱々の具材が現れる。昼間から串カツと酒。この組み合わせに説明など必要ない。



「こんな店、地元にも一軒欲しいな。」
若頭の言葉に、会長も深くうなずく。
観光客向けに整えられた店とは違い、ここには昔ながらの大衆酒場文化が残っている。安く、気軽に、肩肘張らず楽しめる。それこそ新開地・湊川エリアの魅力だ。
ミニベロを走らせなくても、こうして歩いて店を巡るだけで十分に楽しめる。
本日のシノギは順調。
しかし、まだ終わりではない。
パルシネマを横目に最後の一杯。昭和そのままの「たつの」で〆


串カツで腹を満たした二人は、ゆっくり駅方面へ戻る。途中で目に入ったのが「パルシネマしんこうえん」。新開地・湊川エリアに残る映画館として知られ、周辺の昭和レトロな街並みにもよく馴染んでいる。



「この辺はほんまに時間が止まっとる感じがするな。」
若頭がそう呟く。
大規模な再開発で街がどんどん姿を変えていく中、新開地には昔ながらの商店街や映画館、飲食店が残っている。もちろん時代は変わっている。しかし、街を歩けば昔の神戸を感じられる場所がまだまだ存在する。
そして最後に向かったのが、立ち食いうどんの「たつの」。
これまた昭和の空気をそのまま残したような雰囲気で、店先から漂う出汁の香りが、飲み歩いた胃袋を刺激する。






会長が選んだのは天ぷらそば。
若頭はぼっかけうどん。
酒を飲み、串カツを食べ、それでも最後に麺を求める。
「もう十分食うたやろ。」
そう思いながらも、目の前に丼が出てくれば箸は止まらない。
温かい出汁をすすり、麺を啜る。
今日の巡回もこれにて終了。
ミニベロの走行距離はゼロ。
それでも胃袋にはかなりの距離を走らせた一日だった。
締め
新開地・湊川エリアは、派手な観光地ではない。しかし、湊川グルメ、マルシン市場、東山商店街、稲田串カツ店、パルシネマしんこうえん、そして立ち食いうどんの「たつの」と、歩けば歩くほど昭和の神戸に出会える魅力的な街だ。自転車を休ませる日にも、やることは山ほどある。今日も会長と若頭は、酒と肴を求めて街を巡回。風を切らなくても、胃袋に筋を通す――それもまた、兵庫県サイクル&ドリンク愛好会の立派な家業なのである。
マルシン市場、東山商店街
〒652-0042 兵庫県神戸市兵庫区東山町2丁目8−61











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