「明日はどこへシノギに出る。」そんな一言から始まるのが、兵庫県サイクル&ドリンク愛好会の日常だ。この日、神戸ハーバーランドに集結したのは会長と若頭の二人。向かう先は兵庫県三木市の別所ゆめ街道、そして加古川河川敷、大蔵海岸までを結ぶ約40kmの巡航任務である。
歴史ある廃線跡を流し、雄大な河川敷を駆け抜け、最後はいつもの明石亭で盃ならぬドリンクを交わす――そう思っていた。しかし、この日の最後には誰も予想しなかった”JR遅延”という伏兵が待ち構えていた。
神戸ハーバーランド集合、神戸電鉄で別所ゆめ街道へ殴り込み

朝の神戸ハーバーランドに、会長と若頭が静かに集結する。
会長「今日も頼むで。」



「任せといてください。」
交わす言葉はそれだけ。余計な口上はいらない。今日の巡航ルートはすでに頭へ入っている。ミニベロを輪行袋へ収め、新開地駅から神戸電鉄へ乗車。車窓を眺めながら揺られること約40分、恵比寿駅へ到着する。


駅前で相棒を展開すると、まず目指すのは三木鉄道廃線跡を整備した「別所ゆめ街道」。かつて列車が走っていた線路跡は、今では歩行者やサイクリストが気持ちよく走れる遊歩道へ生まれ変わっている。全長約4.8kmと距離は長すぎず短すぎず、のんびり流すにはちょうどいい。




周囲には田園風景が広がり、都会では味わえない静けさがある。ペダルを回す音だけが響き、風に揺れる稲穂を眺めながら進む時間は実に贅沢だ。途中には旧駅舎を改築した休憩施設も整備されており、ベンチやトイレもあるためサイクリングには申し分ない環境と言える。
ただし、このルートには一つだけ注意点がある。日陰がほとんどない。真夏になると容赦なく太陽が照りつけるため、朝早い時間帯の巡航がおすすめだ。







「暑さは敵やない。油断が敵や。」
会長のひと言に若頭もうなずき、水分補給を欠かさず次の縄張りへ向かった。
加古川河川敷を南下、駅前でひと息ついて次なる巡航へ


別所ゆめ街道をあとにすると、二人は加古川方面へ進路を取る。やがて加古川河川敷へ入ると景色は一変。広々とした河川敷がどこまでも続き、信号も少なく、自分たちのリズムで巡航できる快適な区間が始まる。



「ここはええ流れやな。」
会長がそう漏らすと、若頭も一定のケイデンスで後ろを追う。河川敷を吹き抜ける風は心地ええ。派手さはないが、この穏やかな時間こそポタリングの醍醐味なんや。
そのままJR加古川駅へ到着。ここで恒例となりつつある「加古川駅前店」を軽く開店する。冷たいドリンクを片手に今日の前半戦を振り返る。



「今日はまだ折り返しや。」
若頭の言葉どおり、本番はここから。再び輪行袋へミニベロを収め、JR加古川駅から朝霧駅まで移動する。輪行という切り札を使えば、限られた時間でも走りたい区間だけを効率よく楽しめる。これもミニベロならではの遊び方だ。
大蔵海岸・明石亭開店。本日のシノギはここにあり


JR朝霧駅へ到着し、ラ・ムー大蔵海岸店に向かう。今日の営業に欠かせないドリンク類をしっかり仕入れる。



「店を開けるには仕入れと仕込みが命や。」
若頭が笑いながらカゴを持つ姿も、今ではすっかり恒例になった。
買い物を終えれば目的地はすぐそこ。大蔵海岸へ到着すると、いつもの定位置へ腰を下ろす。兵庫県サイクル&ドリンク愛好会の出張店舗、「明石亭 大蔵海岸店」が本日も無事開店である。
目の前には明石海峡大橋。潮風が心地よく吹き抜け、波の音だけがBGMになる。ここで飲む一本は、どんな高級店にも負けない味がする。



「今日もええシノギやったな。」
会長がそう呟けば、若頭も静かにうなずく。別所ゆめ街道から加古川河川敷、大蔵海岸まで約40km。速さを競うわけでもなく、ただ景色と空気を味わいながら走る。それがこの愛好会の流儀であり、明石亭という”店”が一日の締めくくりをより特別なものにしてくれる。


JRまさかの遅延発生。最後は西舞子駅まで押し歩きというオチ
【写真挿入位置:JR朝霧駅・山陽電鉄西舞子駅】




明石亭「大蔵海岸店」を無事に店じまいし、朝霧駅へ戻る。ミニベロも輪行袋へ収まり、「今日はここまでやな。」そんな空気が流れていた。
しかし駅構内へ入った瞬間、その空気は一変する。



「JR動いてへんやないか……。」
電光掲示板には遅延の文字。ホームには足止めされた乗客があふれ、列車がいつ来るのか誰にも分からない。



「ここで待ってても埒があかん。」
会長の判断は早かった。輪行袋から再びミニベロを取り出し、その場で展開。若頭も苦笑いしながら続く。
向かった先は山陽電鉄西舞子駅。
とはいえ駅まではすぐではない。輪行袋を背負い、ミニベロを押しながら歩く時間もまた旅の一部だ。予定どおりにいかないこともある。しかし、それすら笑い話になるのがポタリングの面白さ。



「最後まで何が起こるか分からん。それが旅や。」
無事に西舞子駅へ到着し、ようやく本日の巡航任務は終了。思い返せば約40kmの道中に、廃線跡あり、河川敷あり、海あり、そしてまさかの押し歩きあり。最高の一日は、最後まで期待を裏切らない締めくくりとなった。
締め
兵庫県には、有名なサイクリングロードだけでは語り尽くせない魅力が数多く眠っている。三木鉄道廃線跡の別所ゆめ街道、走りやすい加古川河川敷、絶景が広がる大蔵海岸。それぞれを輪行でつなげば、一日で変化に富んだポタリングが楽しめる。そして予定どおりに終わらないのも旅の醍醐味。JRの遅延でさえ、「まぁ、これもネタやな」と笑って帰れる仲間がいるからこそ、また次のシノギへペダルを踏み出したくなるのである。
別所ゆめ街道
〒673-0444 兵庫県三木市別所町東這田43−6











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